幕末純想恋歌
少し行ったところの店の前で止まる。

「着いたよ。ここ、最近僕のお気に入り。美味しいんだよ?」

「早く!入りましょう!」

葵がパタパタして、沖田の着物を引っ張る。

端から見てとても可愛らしい仕草だ。

本人は無自覚だけど。

「はい、はい。そんな急がなくていいから。可愛いけどね。子供みたいで。」

それをクスクス笑いながらあしらっている沖田。

周りにはじゃれている恋人同士に見えているだろう。

しかもとびきり美しい。

周りはどうしても視線を向けてしまう。

そのことを一方は知らず無意識に、一方は知りながら意識的にやっている。  

(だって、楽しいもん。でも、ちょっと人が来すぎたかな?)

周りには小さな人垣ができてしまっていた。

「早くぅ。」

「はい、はい、入るよ。(ま、いいか。)」

    
< 54 / 131 >

この作品をシェア

pagetop