幕末純想恋歌
「それにしてもカワイイね。…ねぇ、平助。いつまで抱きしめてるの?」

「…え、そ、総司顔が…。左之さん任せたっ!!」

藤堂が脱兎の如く逃げ出した。

「待ちなよ。」

沖田も立ち上がる。

そのとき藤堂にとっては救世主が、沖田にとっては邪魔者が現れた。

「てめらぁ!!普通にに酒も飲めねえのか!!」

土方だった。

「…助かった…。」

「え~、だって平助がいつまでも葵ちゃん抱きしめてるからさ。」

「ご、誤解だってば!!」

「葵だぁ?そういや葵どうした。」

「寝てるぜ。」

答えたのは胡座のうえに葵を抱えた原田だ。

「…どんだけ飲ませたんだよ、おまえら。」

「2杯だけだぜ?」

「ってことは、どんだけ弱いんだよ、コイツ。大丈夫そうか?」

「あぁ。異常ねえぜ。」

「ならいい。今度から飲ませんなよ。ったく幸せそうに寝やがって。部屋まで運んでやれ。」

土方が葵の前髪をかきあげ撫でる。

「なら僕が。そろそろ引き上げるつもりだったし。」

「そうか、なら任せた。乱暴に扱うなよ?」

「僕をなんだと思ってるんですか。」

「馬鹿。」

「…後で一発斬りに行こうかな…。左之さん、その子頂戴。」
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