幕末純想恋歌
能天気な声を発しながら沖田がやってきた。

「ねぇ、まだ?早くしないと朝ご飯遅くなるんだけど、……。」

そこで男に気づいたようで、ふと言葉を切る。

真っ青な葵を見てさりげなく背にかばう。

「あぁ、芹沢さんか。おはようございます。どうしたんです?わざわざこちらに来るなんて、何か用事でも?」

にっこり笑いながら話しかけている。

が、どこか警戒しているような影が眼の奥に浮かんでいる。

それに対し男、芹沢はニヤリといった感じの笑みをうかべ答える。

「沖田か。なに、用事などない。ただ、気が向き来ただけだ。さて、この娘はなんだ?」

「この子は、葵ちゃんで新しい女中ですよ。土方さんから聞いてませんか?」

「あぁ、昨日何か言っていたな…。それか。フン、まずい飯にはもう飽きたからな。せいぜい旨いのを作れよ。」

それだけ言うと、芹沢は踵を返し去って行った。  
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