幕末純想恋歌
珍しく真剣な面もちで沖田は話す。

「すごい人なんだよ。例えばさ、ここ前川邸で、向こうにあるのが八木邸なんだけど、芹沢さんは八木邸に住んでるんだよ。さっきさ、気が向いたから来たって言ってたでしょ。あれ、違うよ。向こうで、君の気配を感じて来たんだよ。知らない気配だから。」

「向こうから!?距離があるのに!?」

「うん。でも、芹沢さんならできるんだ。」

「沖田さんは?」

「できないよ。前川邸の中だけでもあやしい。」

「…すごい。」

「でしょ?それに、第一芹沢さんがいなかったら浪士組は成立しなかった。会津藩お預かりになれたのもあのひとのおかげ。」

「話が、よく……」

「まっ、一概にどんな人とは言えないんだよ。良い人、悪い人とかね。お酒が入らなければ立派な人…なのかな?近藤さん、憧れてるみたいだよ?」

「…土方さんは?」

「土方さんはよくわかんないな。近藤さんみたいに素直に感情出さないから、あの人。…確かなのは、芹沢さんの起こす問題の尻拭いさせられるのは、いつも土方さん。まぁ、仲良くはないんじゃないかな。」

この人は能天気そうで、人のことよく見てると思った。

「沖田さんは?どうなんですか?」
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