【短編集】涙の流れるその原因に
ばたばたもがもが
逃げようとして叫ぼうとして一生懸命に動くけどやっぱり力では敵わなくて。
「諦めろ」の言葉に素直に従ってしまった。
本当なんでこんなことになるのよ・・・。
パパ、ママ、お兄ちゃん、私は一足早く天国に行っちゃうかも・・・。
「は?何血迷ったこと言ってんの?俺殺人者になるつもりないんだけど」
・・・うん?
「・・・ああ、気付いてねぇの?心の声だだ漏れだから」
くすくす(嘲)笑う声に恥ずかしさと怒りを覚えて顔が熱くなった。
「顔熱い」
そう言ってまた笑う男。
いつの間にか緩くなった手の拘束から逃げ出して手で顔を覆った。
「・・・あんた、誰よ?」
搾り出した声に。
「俺?あの桜の精」
けろりと答えた声。
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