【短編集】涙の流れるその原因に
「其の地は人界のものにあらず。
入ったら最後、成長や老いは止まる。
だがその場所から出てしまったら、それは死と等しい。
本来ならば人は立ち入ってはならぬ」
男は怖くなった。
だが、妻を死なせたくなどない。
迷った末、妻に打ち明けたのだ。
「毒を食らわば皿まで、よ」
痛みに汗を流す彼女は、美しい笑顔を見せたのだった。
そうして、男と妻は其処に足を踏み入れたのだ。
不二島、別名不死島(しなずしま)へと・・・。
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