【短編集】涙の流れるその原因に
はじめは幸せだった。
妻は生き永らえたのだ。
愛する人を亡くす恐怖、残す恐怖が消えたのだから当然だろう。
だか、残ったものがひとつ。
妻の病はまだその中で暴れていた。
人が死なないのだから病気も死なない。
妻は痛みに苛まれる日々を100年送ってきたのだ。
……もし、そのまま死んでいたら1年程の痛みだった。
男は妻の為にこの100年を生きてきた。
ご飯を作り、体を拭いてやり、励まし続けた。
だか、どちらももう、限界なのだ。
男は妻の辛そうな顔に心を痛め。
長すぎる先に疲弊した。
妻はこの先治まることなどない痛みに耐えがたくなり。
日に日に痩せ細り疲れた顔の男に悲観した。
永遠など、手に入れなければ。
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