【短編集】涙の流れるその原因に





今でも後悔している。

彼を信じられなかったこと。







芳也とは中学生からの付き合いで、恋人になったのは高校3年の時。

そして大学2年の梅雨の終わり、彼は交通事故に遭った。

……たぶん故意に。







そのころ芳也はおかしなことを言っていた。

「『雨童子』を見た。信じてくれ」

会えば必ずそれを言う。

回数を重ねる度にその目にはどろどろとした恐ろしさが増していった。

だんだん聞くのが嫌になって、彼から遠ざかった。







別れを告げて2週間後、事故がおきた。

その後の調べで彼は友人の連帯保証人になっていて、多額の借金を背負い、借金取りに追われていた。

……知らなかった。

きっともう精神を狂わせていたのだと思う。

『雨童子』はそのSOSだったんだ。

気付けていたら……。

彼の死を知ったあの日、此処で泣いた。




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