【短編集】涙の流れるその原因に
彼を信じれば良かった…!
最後の瞬間まで芳也を離さなければ…。
傘は手から滑り落ちた。
冷たい滴と温かい雫。
落下音は嗚咽と混ざり合った。
「風邪ひきますよ」
傘を拾って渡してくれる。
私はしゃがみながらずっと泣いていた。
「ありがとう」
いろんな気持ちを込めて朝露に言う。
彼はわかっていますよ、と笑ってくれた。
彼のお墓へ行こう。
彼にも感謝を伝えなくちゃ。
足は自然にあの紫陽花から遠ざかっていった。
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