【短編集】涙の流れるその原因に
「…大丈夫?」
背中の後ろにいた彼女に声をかける。
こくりと頷いた。
くるっと振り返ると俯いた状態の月島さん。
ちっせー。
思えばこんな近くに立ってるの初めてかも。
「……あり、がと……」
耳まで真っ赤にさせた彼女を可愛いな、なんて柄にもなく思った。
と、勢いよく扉が開いて入ってきたのは宮内。
一直線に俺ら――月島さんのいるところへと走ってきた。
「塔子大丈夫だったか!?
「大丈夫。佐久良くん助けてくれたし」
宮内はそうか…っと呟き、俺に頭を下げた。
俺は手を振って音楽室を出た。
まるで主役の座を明け渡すように。
けど本心は違う。
いろんな気持ちで満杯だ。
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