ベイビー ラヴ
すれ違い
「おはよう」
リビングには母と比奈しかいなかった。
「あら一成、一人で起きれたの?お母さん、驚き!」
「あのなぁ母ちゃん、俺だって起きれるってば」
比奈は黙々とランドセルに荷物を詰めていた。
「比奈、おはよ」
「おはようございます」
ニコッと微笑む、いつもと変わらない姿。
「あの…さ…」
「?」
なんといえば、いいのか…
「あの…さ…えっと…」
バシッ!
無言の母の鉄槌。
しっかりさない!と伝わってきた。
「昨日、ごめん!助けに行けなくて…気付いてやれなくて…」
キョトンとした比奈の顔
「比奈は一人で大丈夫だったよ?だって、比奈には兄ちゃんがいてくれるんでしょ?助けてくれなくても、傍にいてくれるだけで、比奈は嬉しい…」
本当に嬉しそうに言う比奈に、言葉がでなかった。
言葉の代わりにでたのは、涙で…
「比奈ちゃん、そろそろ出るわよ」
そんな俺を庇うかのように母は比奈を急がせた。
比奈も焦って…
こっちを見ることもなく、
「いってきまぁす!」
今日も元気に登校していった。