遠い宇宙の果てで
「愛美です。この犬はピノっていいます。王女さまに会いに来ました。」
おじいさんはよ~く愛美の顔をうかがってから
「お待ちしておりました。王女さまは今ご自分の部屋で本を読んでおります。ご案内します。」
といってピノの足を手にしていたはんかちで拭いてから愛美とピノをお城に入れた。お城は天井が高く、中もほとんどが白で統一されていた。数か所の隅のテーブルには華やかな花瓶に大輪の花束がいくつか飾られていた。愛美の足元の赤くて長い長いカーペットの先には金色と赤色のクッションの玉座が3つ並んでいた。
「このお城には王様はいるのですか?」
と愛美は執事に問いかけた。
「はい、それが・・・、侵略に遭い王女さまのご両親は敵国に殺されてしまったのです。」
「王女さま、かわいそうに。」

愛美は執事に連れられて玉座の両脇のある階段のうちの片方を上り、その奥の部屋へと入った。そこは大きくて長いテーブルとシャンデリアのある部屋であり、どうやら食事をする場所のようであった。その部屋をまっすぐに進み、片方の壁がガラス張りである右の廊下に出てしばらく歩みを進めたところに王女の部屋があった。ガラスからは青々とした山山と川が見えた。執事は王女の部屋をノックし
「愛美お嬢様です。」
と言った。すると奥から
「入れなさい。」
というピアノのような奇麗な声が聞こえてきた。執事は愛美の方を見ながら手のひらを返してその部屋の扉を示した。愛美はうなずき、ノックをしてから
「愛美です、入ります。」
と告げ、ピノと一緒にその部屋の中に入った。執事は
「私はこれで。」
と一言つげ、その場から立ち去った。

王女の部屋はこじんまりしており、書き物机とベッドが1つずつに、出窓のところにマーガレットが一輪刺さった紫色のガラスの花瓶があった。また、細長い少し大きめの本棚が机の隣にあった。王女は赤いカーテガンを肩に羽織り、クリーム色のふわふわした暖かそうな長袖のワンピースを着て机に向かって本を読んでいた。そして愛美の方を向いてにっこりほほ笑んだ。髪の色は愛美を同じ栗色に近い黒をしていたが、目は緑色をしていた。愛美はそれを見て軽く頭を下げた。
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