こいのはなし。
 ゼミの女の子が、商店街の中に可愛い雑貨屋があると言っていたのを不意に思い出した。

 地元の駅の北側は、ショッピングモール等がある開けた方。

そっち側ではなく、南側の駅は、まだ開発が手付かずで、商店街が残っている。

場所は商店街ということしか解らなかったけれど、…まあ、行くだけ行ってみよう、と。


僕は普段ほとんど利用しない南側のエリアに足を向けた。


いくつか、シャッターがしまっている商店街を歩く。
 おじいちゃんがやっている魚屋は、買い物袋を提げた主婦がいっぱいだった。

おばちゃんがやっている肉屋はコロッケや唐揚げ、肉じゃがといった惣菜も置いてあって、食欲をそそられる。

その先の団子屋では、ずんぐりむっくりした、ぶすな猫が店先で香箱をつくって眠っていた。

 なんとなく、いい場所だな…と僕が思っていると…。

 突如、ファンシーを絵に書いたようなヒラヒラ、ふわふわした店があらわれた。


…これはちょっと。


 男の僕には、だいぶ入りにくい店構えだった。


< 3 / 32 >

この作品をシェア

pagetop