こいのはなし。
プレートを持つ、よく手入れされた彼女のキレイな指先。



つるっとした、さくら貝みたいなピンク色の爪。



可愛らしくて、目が離せなくなった。



爪の先を見つめながら、僕は薄い水色を指差した。



僕の、少し荒れた指先が恥ずかしくなって、慌て手を引っ込めた。



「じゃあ、これで包みますね」


「お願い、します」



つるっとしたさくら貝の爪が、キレイな指先が、イビツなバケツを水色の包装紙で包み込んでいく。



「彼女さんへですか?」



「あぇ?」


指が、爪が気になっていた僕は、酷く間の抜けた返事をした。



「これ、プレゼント」


彼女の手元のバケツは、あっという間に薄い水色に包み上がっていた。




「や、彼女なんていませんよ。親友の誕生日プレゼントを…」


なぜ、僕はこんなに取り繕う必要があるのだろうか。


「プレゼント、喜んで貰えたら良いですね」



「…はい」



お金を払いながら、僕はまた、彼女の指先へ視線をやった。



商品を受け取って、





「ありがとうございました。また、よかったらどうぞ」


微笑まれて、どきりとした。




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