妖精なアイツ【完全版】
first fairy

転校

ポカポカ陽気とともに、眠気も一緒に襲ってくるこの季節。


あくびをしながら伸びをする癖がついてしまった。


桜井美希(さくらい みき)、高校一年生。
出身も育ちも大阪。


でも、それもこの年で終わりだという事を聞かされたのは、夕食時の事だった。


さっきおとんから電話がかかってきて、おかんが取った。
内容は別に聞いてへんけど、おかんの口から出た言葉は…


「転勤?」


転勤って…職場が変わるって事やんな?て、ことは?


「あんたらには悪いけど、転校せなアカンな。」


やっぱりなー…。


「えー、高校入ったばっかやのにー…まあええか。どこなん?奈良?和歌山?」


地理に詳しくない私はとりあえず分かる、近畿の都道府県をあげてみた。


「…東京」


「えー。まじでー。東京なら私でも知ってるー……って、遠っっ!!」


口の近くまで運んでいた米粒をテーブルに落とす。いくらなんでも…遠すぎひんか!?


「お前、下品なヤツやな。もっと行儀良く食えっ」


兄貴に頭をどつかれて、テーブルに頭をぶつける。


「痛いなあ!何すんねん!!兄貴だって嫌やろー!今年で卒業やねんから!」


桜井若也(さくらい わかや)、高校三年生。
うっとおしい、私の兄貴。そして髪の毛は、ワカメみたいだ。


「俺は向こうの大学行きたいって思ってたからええねん」


「はあ?ワカメを入れてくれる大学なんて無いで?」


「誰がワカメや!」


その後、兄貴と喧嘩して、おかんにご飯を取り上げられた。


…かなりひもじい。
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