妖精なアイツ【完全版】
「桃子っ!一緒に帰ろう!」


「へ?…う、うん、いいけど…」


夏男は、先に校門前で待ってる。


このまま夏男に合わせて、誤解を解いて、二人は仲直り…そして、見事カップルに!


うん、最高!私は自分の計画に酔っていた。


そして、校門前。夏男の姿を発見。


「夏男―!」


私が叫ぶと、桃子はハッとしたような顔をして、夏男を見る。


「桃子…昨日は…」


「いいよ。私、全然気にしてないから!」


桃子は、笑って言う。
そして、スタスタと歩いていってしまう。


「ちょっと、待てって。まだ続きがあるんだ。」


夏男は、桃子の腕をガッシリと掴んだ。
振り向いた桃子の目には、涙が溜まっていた。


「どこが、“全然気にしてない”だよ。」


夏男がそう言うと、桃子は溜まっていた涙を流す。


「昨日は、感情にまかせてあんな態度取ったけど、言葉がひとつ足りなかった。」


桃子は涙を拭って、夏男の話を聞く。


「“本命じゃなきゃ”…いらない。そう、言いたかったんだ。」


桃子は、夏男の目をしっかり見て、鞄を開けた。


昨日、渡そうと思っていたチョコだ。


「今年は、ナオも、ミッキーも一緒に…本命だけ買おうって言ってたの。…ひとつしか、買ってない。…本命だよ。」


桃子は、涙を流して、夏男にチョコを渡す。
夏男は静かにそれを受け取った。
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