妖精なアイツ【完全版】
次の日の朝、大きなアクビをしながら顔を洗いに洗面所へ向かった。


「…ちょっと、兄貴。どいてよ」


顔を洗おうと思ったのに、兄貴に先使われていた。


「ええやんか、今日休みやねんし。ちょっとくらい待っとけや」


兄貴はシャカシャカと、歯磨きをしている。
髪の毛は今日もワカメだった。


私は兄貴の髪の毛を引っ張った。


「いてててて!何してんねん!!」


「え。みそ汁の具になるかと思って。」


私は兄貴の髪の毛を離さずに言った。兄貴は歯ブラシを洗って言った。


「アホか!俺は豆腐と揚げのみそ汁しか食わん!」


……そこを怒るんだ。


兄貴はガラガラペーをして、ワックスで髪の毛を整え、怒りながらリビングへ向かった。


「…今日のワカメはツヤええなあ」



そう呟いて、蛇口をひねった。


顔を洗い、ハミガキをしてリビングに入ると、食卓に座り、ワカメのみそ汁を見て嫌そうな顔をしている兄貴がいた。


それをほくそ笑んで見ていた。


みそ汁から丁寧にワカメを抜き取っている兄貴の邪魔をしていると、玄関のチャイムが鳴った。



ピポーン。ピポピポピポーン。


「なんや?うざいなあ、このチャイムの鳴らし方。」


私がそう言うと、兄貴がワカメの無くなったみそ汁をすすった。


「このチャイムの鳴らし方は長谷川やろ。」


みそ汁を飲んで、熱かったのか、フーフーしながら兄貴が言った。


長谷川哲(はせがわ てつ)、私と同い年の幼なじみでお隣さん。
いいヤツだが、少々うざい。
< 3 / 152 >

この作品をシェア

pagetop