妖精なアイツ【完全版】
それからヤキモチの演技が上手くなったのはいうまでもない。
珍しくゴリに褒められても、なんだか嬉しくなかった。


知らなくてもいいような…知りたくなかった感情が、ずっと僕の中で渦巻いていた。


兄貴と桜井先生が、あんなに仲良かったなんて知らなかった。
別にわざわざ言う程の事でも無いのは分かっている。


「はあ…」


何かため息ばっかりだな…。
そう思い、げた箱へ向かう。


明日は舞台の日だ。


「やれるかなこの状態で」


ぼそりと呟き、家路についた。
台本を何度も読み返し、あの言葉を思い出した。


『私妖精って好きやねん』


その言葉を思い出し、夜中まで台本をよみ返していた。


「きゃー!やっぱ似合うー!!」


女子は妖精の衣装を着た僕を見てはしゃいだ。
正直かなり恥ずかしい。鏡で自分の姿確認すると、女みたいだ。


「こんなの桜井先生見たら笑うだろうな…」


一人の時にポツリと呟いた。その前に、来ているのだろうか?


不安に思い、舞台袖からこっそりと客席を覗いた。
桜井先生は最前列にいた。職員席だから当たり前か。


隣には何故か兄貴の姿が―…


「生徒会長席…なるほどね」


別に、たまたま隣だっただけ。
そう自分に言い聞かせていた。
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