妖精なアイツ【完全版】
ガタンゴトン、
むなしく電車は動く。
同じ車両の乗客が、こちらを指さして笑っていた。
「長谷川…あいつおもろいやっちゃな~」
兄貴が大袈裟に笑い、開いている座席に座る。
「笑い事ちゃうやん!めっちゃ恥ずかしいし、はあ…新大阪まで、この空気でおんの嫌やなあ。おとん、おかん、兄貴、車両移動しよ。」
そう言った直後、携帯のバイブが鳴った。
「のり姉からや!」
車両を移るドアの前で叫ぶ。
「お前…いちいちうるさいねん。そんなにのり姉が好きなら結婚したらえーやん」
振り返ってげへへ、と笑う兄貴の顔面をグーで殴り、メールを開く。
【うちの高校受かったんだってね!おめでとう★東京に着いたらメール頂戴ね!今日は早引きさせてもらうように、頼んでおいたから♪ のりこ】
メールを見て、朗らかな気持ちになった。
メールには、画像が添付されていた。
題名には、【学校での様子】と書かれていた。
そこには、体育祭の様子と、教室内、そして、男子生徒と写っているのり姉の写真。三枚の画像だった。
「へーっ、のり姉モテんねやあ!」
「お兄様もモテんねんぞ」
兄貴は、女の人達に囲まれてハーレム状態の画像を無理やり見せてきた。
「ワカメが美味しそうやと思ったんちゃうの。」
そう言ってスルーし、最初に居た車両より三つ先の車両の座席に腰を下ろした。
「ふざけんなよー!お前!!」
キイー!!と叫ぶ兄貴を無視し、メールを返信した。