彼女に捧げる新世界
記憶に溺れる







真っ暗な場所。

どこなのかもわからないけれど………。



見えないけれど、聞こえる。



………小さな子供の笑い声。


草を踏む音もするのに視界は回復しない。



ふと漂ってきた花の香り…………。





この香り………?

なにか覚えがあるような…………?





パッと視界が開き、懐かしい光景が映る。


暖かな日差しと、一人であそんでいた幼い自分。

花冠を作ろうと必死になって野花を摘んで、何個も何個も失敗したあの時………。



鮮明に映る世界。





わたしの記憶と同じはずなのに、どこか遠い視点。



子供のわたしが“彼”と出会った昔。

魔王だとは知らずにゴーストかなにかだと思って、楽しげに近づいたんだ。






少女が黒いものに近付く………。




< 122 / 205 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop