彼女に捧げる新世界
記憶に溺れる
真っ暗な場所。
どこなのかもわからないけれど………。
見えないけれど、聞こえる。
………小さな子供の笑い声。
草を踏む音もするのに視界は回復しない。
ふと漂ってきた花の香り…………。
この香り………?
なにか覚えがあるような…………?
パッと視界が開き、懐かしい光景が映る。
暖かな日差しと、一人であそんでいた幼い自分。
花冠を作ろうと必死になって野花を摘んで、何個も何個も失敗したあの時………。
鮮明に映る世界。
わたしの記憶と同じはずなのに、どこか遠い視点。
子供のわたしが“彼”と出会った昔。
魔王だとは知らずにゴーストかなにかだと思って、楽しげに近づいたんだ。
少女が黒いものに近付く………。