彼女に捧げる新世界
どうしてそんな事を言うの………?
振り返らない彼はゆるりとはためきを繰り返す、呼吸するかのような自然さだ。
「私は“ニル”ではないよ印を持つ者………。
お前の見ている私は魔王の記録した時間」
現実ではないという事を忘れてしまうほどリアルな世界に、戸惑いを隠せない。
「どうして…………、」
あなただけ、わたしと会話出来るの?
今まで見たものは会話どころか、ただ見ているだけしか出来なかったのに………。
彼の背を見つめていると、不思議な笑みの気配を感じた。
「お前が本当の“魔王”を探しているから。
立ち去るように言ったのは警告だ」
「どうして警告するの?
わたしはニルに会いたい!危険なんて怖くないよ」
来たくてここに来たわけじゃない。
けれど、何か意味があるからだと思う。
ニルと繋がる何かが、