彼女に捧げる新世界



どうしてそんな事を言うの………?


振り返らない彼はゆるりとはためきを繰り返す、呼吸するかのような自然さだ。


「私は“ニル”ではないよ印を持つ者………。

お前の見ている私は魔王の記録した時間」




現実ではないという事を忘れてしまうほどリアルな世界に、戸惑いを隠せない。


「どうして…………、」


あなただけ、わたしと会話出来るの?





今まで見たものは会話どころか、ただ見ているだけしか出来なかったのに………。



彼の背を見つめていると、不思議な笑みの気配を感じた。




「お前が本当の“魔王”を探しているから。

立ち去るように言ったのは警告だ」



「どうして警告するの?

わたしはニルに会いたい!危険なんて怖くないよ」





来たくてここに来たわけじゃない。

けれど、何か意味があるからだと思う。



ニルと繋がる何かが、










< 129 / 205 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop