彼女に捧げる新世界
なにもない空間からはみ出してきたのは黒い塊だった。
徐々に全貌を見せるそれは、考えずとも何であるかを理解させる。
空気が凍り付くような威圧感と、圧倒的なまでの存在感………。
緩やかにはためく翼を背負う異形は、もしも白かったなら天使のようだろう。
美しすぎる面、痩せた体躯だが華奢ではない。
若く見えるが、老人のような、子供のような…………年齢不明な雰囲気。
人とは明らかに異なる異質な気配は、見たくなくても惹き付けられる。
赤子を抱くように大切に包みこむものはミラだった。
魔王はゆっくりとエルファリアに近づく、
機械なのに言い知れない恐怖を感じる…………。
何を言おうかと考えている内に、魔王ニルはゆっくりと唇を開いた。
「……………魔王は限り無く全能に近い、
けれど万能ではない」
落ち着いた声から感情は探れないが、彼からは不思議な視線を感じた。