彼女に捧げる新世界
ニルはスーッとカイトの横を通り過ぎ、エレベーターのところにいるリアの目の前に降りた。
何かをする様子はないがカイトは動けない。
足が石になったかのように少しもだ…………。
やめろっ!
そう叫びたいのに、唇も動かない。
魔王が一瞬笑った。
「お前の選んだ“運命”を見届けるんだね…………」
魔王は頭の中に直接告げてきた。
リアの細い首を簡単に包んでしまう長い指に力がこもることはなく、
まるで………脈を感じているかのような弱い圧迫。
威圧感のある美貌の奥からは目を見開いているカイトが見えた。
驚き?
冷静で慌てたりしない彼のそんな顔はどれくらい見なかっただろうか………。
カイトとそっくりな整った顔は、よく見ると少しも似ていない………と、ぼんやり思う。
これは人なんかじゃない、
きっと綺麗な皮を被っただけの黒いもの。
いつか、
私は天罰が下るかもしれない…………。