彼女に捧げる新世界
ゆっくりと目を閉じた瞬間、体から重力が消えた。
「リア!!!」
ようやく声が出たのは彼女が泡のように消えた瞬間だった。
声は出ても体は動かない。
駆けつけたいが、どんなに動こうとしても動かない。
目の前で彼女が消された、その無力さに心底腹が立つ。
こんなにも力の差があり、埋められないものなのだと…………。
血が逆流するほどに怒りを感じた。
「何をしたっ!!!!!」
「邪魔だから消しただけだが?」
振り返った魔王は何事もなかったように平坦な声で答える。
「殺したのか………っ!!?」
まさか………、
けれど否定しきれない自分がいる。
奴の力なら人を殺すことも花を折ることも同じように感じた。
ニルは瞬く間にカイトの目の前に現れ、細い指先で彼の頬を撫でる。
その瞬間、冷たい汗が吹き出し、極寒の地にいるかのような寒気がした。
凄んでみたはいいが、
本能が魔王に恐怖を感じているのか、鼓動ばかり速くなる。
金緑の瞳の奥には虚な闇が見えた…………。