彼女に捧げる新世界




ゆっくりと目を閉じた瞬間、体から重力が消えた。








「リア!!!」





ようやく声が出たのは彼女が泡のように消えた瞬間だった。



声は出ても体は動かない。

駆けつけたいが、どんなに動こうとしても動かない。



目の前で彼女が消された、その無力さに心底腹が立つ。


こんなにも力の差があり、埋められないものなのだと…………。




血が逆流するほどに怒りを感じた。



「何をしたっ!!!!!」


「邪魔だから消しただけだが?」




振り返った魔王は何事もなかったように平坦な声で答える。


「殺したのか………っ!!?」


まさか………、



けれど否定しきれない自分がいる。


奴の力なら人を殺すことも花を折ることも同じように感じた。




ニルは瞬く間にカイトの目の前に現れ、細い指先で彼の頬を撫でる。



その瞬間、冷たい汗が吹き出し、極寒の地にいるかのような寒気がした。



凄んでみたはいいが、



本能が魔王に恐怖を感じているのか、鼓動ばかり速くなる。




金緑の瞳の奥には虚な闇が見えた…………。





< 151 / 205 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop