彼女に捧げる新世界



キョロキョロと周囲を見つめても姿はない。



ふいに鳴った雷に空を仰いだ瞬間、


彼が見えた。




夜闇に浮かぶ更に暗い翼とそこから舞う光の粒子。


魔力を纏う雷がピカピカと横に走り抜け、雲を泳ぐ蛇のようにも見える。



ニルは空中に立ちゆっくりとはためきを繰り返していた。



彼の周囲は極彩色に彩られ、祭りのように賑わう。

雷鳴がなる度に彼らは騒いでいるように見えた。




きっと………この世界の眷族は形も作れないくらい衰退しかかり、

近づきすぎれば消えてしまうかのように魔王から距離を置いている。






じっと見つめていると、ニルはミラに気付いた様子で降りてきた。


細やかな光が流れて消えていく…………。







ふわりと百合の香りが漂った。




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