彼女に捧げる新世界
「姫君……どうなさいました?」
澄みきった黄金の瞳が自分と彼を見つめた。
カイトが硬直しているのがわかる。
声一つ上げないとは大した男だ………とミラは思いながら、馬の頬を優しく撫でた。
「彼とわたし、森で迷ってしまったの………彼の国に行くためにここから出たいけれど、助けてくれる?」
「姫君はともかく………この世界の人間は救う価値などありません。
自然の悲鳴を無視し続けた者どもです」
この世界は魔力がほとんどないのです………。
と、馬は悲しげに目を伏せた。
「あなたたちは頑張ってきたんだね……。
わたしにまだ魔王の魔力はある?」
「姫君………?」
「ニルは……魔王はとても大きな力がある、側にいたわたしにも少しくらい残っていると思うの」
馬から見たミラはこの世界のどの眷族よりもきらきらしく、
その美にさえ魔力が宿り、側にいるだけでも恩恵を受けられる………。
惹かれてしまうのは魔王の魔力もあるだろうが、
同様に彼女の存在感は幸福な気分にしてくれていた。