彼女に捧げる新世界
わたしを呼んだ声がした。
暖かな腕の中で微睡むのが心地良くてなかなか現実に戻れない。
ふわふわとしながら開いた瞳に映ったのは柔らかな羽毛だった。
まるで鳥の巣の中にいるみたい。
何十にも組まれた細い枝、複雑に絡み合って球体のようになり、そこに敷き詰められる羽。
艶やかな黒に溶けるように自分を抱えるニルは眠っているような穏やかな表情をしていた。
ミラは慎重に身動き、白い頬に手を伸ばす。
撫でれば赤ん坊のように気持ちいい肌触りで、つい撫で過ぎたのか…………長い睫毛が動いた。
青白い肌を際立たせる金緑は、頬を撫でるミラを見ても少しも反応を示さない。
眉一つ動かすことなく動いた手が優しく頭を撫でる。
髪の隙間からチラチラと覗く金緑の爪も宝石のような色だ。
彼は本当に綺麗で、眷族だけでなく人間も動物も…………世界にさえ愛される姿をしているんだろう……………。
いつから何もしていないのか考えるのも面倒なほど、静かで穏やかな時間を過ごすのは久しぶりな気がした。