彼女に捧げる新世界
どうしてか嫌そうな感じに困惑しながらミラは訴えた。
「行きたいよ、ちゃんと二人を見たい…………。
まさか、何か知ってて隠してるの??」
「違うよ、隠してはいない。
ただ………、」
ただ?
一体何を迷うのか、ニルは宥めるように撫でてくる。
けれど諦められない。
黙って見つめていると、彼はようやく続けた。
「………人間がたくさんいるところは好まない。
安定してると言っても、何かの拍子に壊し兼ねないからね………」
街を破壊するのは人間のフリをするよりも簡単だ。
冷静であるつもりだが、ここは自身の存在する世界じゃない。
それに、深夜に訪ねるのは礼儀に反する………。
真昼にするには自分たちは目立ち過ぎるだろう………。
諦めてくれれば一番いいが………。
「大丈夫よ、」
ミラはフフッと笑う。
「ニルは壊したりしないよ、眷族たちを傷つけたりしたくないと思うから……」
人も、動物も。
楽しそうに笑う彼女に、諦めるのは自分になると思った。