彼女に捧げる新世界
「不思議ね、みんなはわからないけど……ここは別の世界」
「そうだね、俺達にとっての常識は当てはまらない。
彼らはとても自由だ……」
各々が好きな事をしていて、夜に働く者もいる。
子どもたちもいろいろな遊びをして、大人は機械に夢中。
人工的な緑に大陸をひしめく高層な建築、舗装されすぎた道。
“色”の少ない世界。
「たくさんのものが溢れているのになんだか寂しい」
ミラの言いたい事はわかっている。
目を引く物はたくさんあるのに光がない、ということだろう………。
「自由過ぎるのも惰性を生むのだろうね。
逆に縛られすぎているのかもしれないけれど……」
「?」
ポカンとした顔が見上げてくる、
「労働、金、義務、教育………絡み合う思惑、様々なものに引っ掛かるうちに、本来大切なものを忘れていくんだよ」
忘れていく………、
思い出せた者はどれだけいるのか?
幸せは人それぞれだが、彼らもそうだったのかもしれない。
すれ違い続けて、会うまで時間が掛かったように見えた。