彼女に捧げる新世界
夢みる時間、醒める泡沫
この街はとても美しい景観、輝く海や爽やかな潮風、適度に暖かい気候、生き生きとした緑………。
「きれいな街ね………」
ミラはポツリと漏らす。
近代的過ぎるイスキアに比べると、ここは少し歴史のある場所に思えた。
田舎、と言えばあまり聞こえはよくないが、都会の喧騒を忘れるくらいに静かで過ごしやすそうな街だ。
暖かみのあたる煉瓦の外壁や、金属も加工が違う。
別世界だが、少し近く感じる何かがある気がした。
ニルは相変わらず特に反応は見せない、けれど案内がいるかのように迷うことのない足取りで進む。
「…………確かになかなかいい街だね」
「うん、なんだかカルナバルの風景を思い出すよ」
「カルナバルは内陸部だから見えるのは湖だけど、
少し似ているね」
車の通りも少ない道はとても快適に歩けるし、広くていい。
微妙にズレた考えだが、二人は手を繋いで歩く。
歩かなくても目的地には行けるが、あちこちを見たいと思うミラの為ならそれもいい。
どうせ、
この先が最後の場所だから。