彼女に捧げる新世界
「うん」
普通に頷かれても………。
馬に乗ったのは訓練生の時の一時期だけだったし、喋る馬なんて……。
しかもアレだ……未知の存在だろう?
この世界の消えた魔王の……。
冷静に考えれば、無駄な体力を使わずに樹海から出られるチャンスだ。
面子は置いておいたほうがいい……。
僅かな時間に考えを纏めたカイトは頷いた。
「頼む」
「…………」
「彼もお願いしてるよ?」
「…………貴様の口からまともな言葉が出るとは……」
馬の鬣が風もないのにフワリと揺れた。
その瞬間。
目の前に細身の少年が立っていた。
「姫君、私をお供にお連れいただけますか?
この男と貴方を二人には出来ません」
少年の髪は真珠のように柔らかに白く輝き、瞳は黄金。
絵画の中から飛び出してきたかのような神々しさを纏っていた。
驚きながらもミラは頷いた。
「もちろん、心強いわ!」
少年は彼女の言葉に優しく笑みを浮かべる。
「有難いお言葉です。
申し遅れましたが、私はシムとお呼び下さい」