彼女に捧げる新世界
振り返ってしまわないように、わたしにはわたしの道があるから。
黒い翼をもつ魔王と共に、湖畔に浮かぶ城に帰るね。
ニルが腰を支えふわりと体が浮いた。
「……………じゃあね。
もう魔王を呼ぼうなんて浅はかな事を考えぬよう。
闇にひきずられてはいけない……」
ニルはカイトを見据え、釘を刺すように言った。
「魔王は神ではない、甘美な囁きも、力も……過ぎた望みは身を滅ぼす。
眷族たちがお前を見ている、間違いが起きそうになれば……」
わかっているね?
ゴクリと喉が鳴ったような気がした。
わたしはそれを見なくてもわかる気がして顔をあげられない、
ふいにニルにギュッと抱き締められた瞬間、ぐにゃぐにゃと景色が歪んだ。
気持ちが悪くなるような光景に瞼に力が入る。
視界が遮られ、音も消えたとき………人の気配は無くなった。