彼女に捧げる新世界
「暗い顔は幸せが逃げてしまう、と人間が言っていました。
どうか異郷でも幸いに、我らは遠く離れていようともお仕え出来たことを誇りに思います………」
誰よりも美しい姫、
如何なるものよりも強い魔王。
いつかいたこの世界の魔王、もしも戻られたなら………、
眷族たちは皆、人の姿の魔王の話を聞かせるだろう。
弱り、塵のようになってしまっていた我々に恵みを下さったと………。
彼の方がおられるだけで、世界はこんなにも輝いたのだと。
ミラの少し潤んだ瞳はとても美しかった。
優しい優しい姫だ。
闇も恐れない強く純粋な心は我々を惹き付けて止まない。
「シム、
一緒にいられた時間はあっという間だったけど……、あなたがいたからわたしはここまで来られたの。
あなただけじゃない、いろんな人たちや眷族たちが助けてくれたんだっておもってる」
ニルがいなくても、隙間を埋めてくれた。
わたしを守ってくれた……。
独りじゃなかった。
それだけで十分に嬉しい。