彼女に捧げる新世界
湖は太陽に輝き、柔らかな風の立てる小さな波が寄せては返す。
自然に笑うミラは子供の頃の面影をちゃんと残していた。
穏やかな時間が続けばいい。
もう少しこの畔で寛ぎ、夕刻までに戻ろう………。
眷族たちは帰還に気付いているはずだから。
騒ぎ立てないだけ彼らなりに気を使ってくれたのかもしれない。
邪魔されたくない、
「ミラ………」
振り向きと同時に舞った髪と可愛らしい笑みが、愛しい。
こんな姿を見るのも楽しみだった。
「俺を呼び戻してくれてありがとう」
綻んだ世界に散った魔力が再び魔王としたのが自分で良かった。
ミラがいない、その世界が色を無くし………気づけば世界中から彼女を探す自分がいた。
不完全な姿でさえ会いたかった、欠片でもそう。