彼女に捧げる新世界
シムは膝を着き深々とミラに頭を下げた。
それを見たカイトが息を飲むのが伝わる………。
やはり……この女はただ者ではない……。
優しく頭を上げるように言っているが、化け物を従える何か………。
魔王の妻という身は、
うまく使えば…………。
「カイト?」
考えこんでいたところに、彼女が不思議そうに話しかけてきたため思考を停止せざる得ない。
悟られるな!
そう思いながら、
「どうした?」
と、
何事もなく返せば、彼女は少しだけ微笑んだ。
「シムとわたしを“都市”というところまで連れて行って?
突然現れても問題のない場所じゃないと………人々が驚いてしまうでしょう?」
「そうだな………休暇中ではあるが、別邸なら俺個人の所有だし。
人気は少ないから問題ない」
「じゃあそこに決まりね!シム、行こう」
「わかりました」
ミラはふんわりと微笑んでカイトの手を握る。
その手は予想以上に細く、小さくて暖かかった。