彼女に捧げる新世界
ミラは水を貰い、シムが断るとカイトが立ち上がりどこかへ行く。
少しすると彼の手にはグラスが二つあり、ミラの前に置かれた。
「ありがとう」
「いや」
彼が先に喉を潤し、一息つくとゆっくり口を開く。
「この世界の質問は後で聞く、先にお前の事を聞かせてくれ」
「いいよ。
わたしは異世界から来たみたいで、今わかる事はこれが夢じゃないという事くらい。
あっちでは大切な人を失って悲しみに落ちていたの……。
今も悲しいわ」
「もう一人の魔王がここへ連れて来たと言っていたな?
確かに今は夢ではない、大切な人というのは雷皇である魔王か?」
胸が痛い。
しかし、言わなければならないだろう………。
隠す必要もない事実であることだ。
「そう。
独りぼっちだったわたしに世界を見せてくれて、いろんな事を教えてくれた人は魔王だよ。
雷皇、ニル」
「親族はいなかったのか?」
怪訝な顔で言われたが、たぶんいない。
いたなら違う結果だったかたもしれないし、今ではわからないが………。