彼女に捧げる新世界
「あの…………」
店員の若い女性2人がもじもじとしながら近づいてきた。
何だろう………?
そう思いながら二人が振り返ると、女性たちはキャッと頬を染めた。
自分を見てではない、視線を追うとカイトにたどり着く。
「何か?」
抑揚のない声で彼が言うと、
「あのっ!オルワンド首相に似てるっていわれませんか??」
「?」
不思議に思いながら見つめると、彼は面倒そうな顔をした。
「人違いだな」
え?
「首相がこんなところにいるわけがないだろう?」
堂々と人違いと言ったばかりか、そんな事まで言うのか?
呆然とするミラや店員を無視し、違う店員を呼びつけてしまう始末だ。
「…………」
「何か言いたい事でも?」
大有りだ!!
「車に乗ったとき、オルワンド首相って言ってたわ」
先ほどの店員には聞こえないようボソリと言うと、
「本人だと言ったらただじゃ済まない」
短い答えが返ってきた。
首相であることは否定しないが、面倒を起こしたくないらしい………。
その理由がミラはわからなかった。