彼女に捧げる新世界
何着かの衣服を適当に選び店を出た後、彼はミラの手を引いて裏路地に入って行った。
路地は明かりが少なく、薄暗い……。
そして、街とはまったく違う雰囲気に包まれていた。
「カイト?」
呼び止めても、足が止まらずにどんどん奥に入っていく。
まるで、よく知った道を歩いているかのようだ。
辺りを見ると、あちこちに人が座り込んだり、たむろっていたり、酒を飲んでいたり………異様な雰囲気だ。
目を合わせないように見るが、少し怖くなる。
「ねぇ、もどろう?」
嫌な予感というか、なんとも言えない感覚を覚えて訴えるが彼は止まらない。
「もう少しだ、この先にイスキアを蝕む害虫が蔓延るところがある」
「怖いよっ」
嫌な気配がする。
そう思った瞬間、カイトが立ち止まった。
ミラは彼の背にぶつかって止まる。
「カイト……?」
スーツ姿の男二人が扉の前いて、彼と自分を見ていた。
門番にも似た二人の間を彼が堂々と扉に向かって歩き出す。