彼女に捧げる新世界
ニル………。
彼はいない、そうわかっているのに心がざわめく。
会いたい、会いたくて仕方ない………。
わかっていても、苦しいよ。
忘れられたらどんなにいいんだろう………。
「おい」
ニル、一人にしないで。
「………いくぞ!」
グイっと手を引かれ、ハッと我に返った。
目の前には自分を覗き込むカイトの姿。
「ごめんなさいっ!
なんでもないのっ」
慌てて取り繕うが、疑うような視線を向けられた。
「…………そうか、接続不良かと思って心配した」
「大丈夫だよ」
心の中でそっとため息をつき、考えごとに気付かれなかった事に安堵する。
きっと、緊張しているんだ。
そう自身に言い聞かせながら、ニルを思い出すのを止めた。
今は知らない世界、目の前の事に集中したほうがいい。
ゆっくりと足を進め、少女の後を追った。