彼女に捧げる新世界
止めなければ!
そう思うのに、言葉が出ない。
カイトは涙を流すミラの頬にそっと手を触れ、それを拭う。
ダメ!
脆い糸で繋いだ虚勢が崩れてしまう。
期待してはダメ、これ以上の絶望には耐えられない。
やっとの力で目を閉じる。
そうじゃないと彼に似た顔に惑わされてしまうから。
叶わない望みを言ってしまいそうなんだ………。
あの人はやっと休めた。
長い時から解放されて、眠っているのに………。
呼び戻してはいけない。
会いたくても、
どんなに会いたくても、
我が儘を言ってはいけない。
目を閉じても浮かぶ声、仕草、蘇る感触。
どんなに忘れようとしても出来なかった。
後を追おうとさえ思った人。
わたしが………愛する人。
頷くまでそう時間はかからなかった………。