彼女に捧げる新世界
古書を鞄に入れ、カイトは車を回した。
外はすごい強風で、木が若干斜めにまでなっている………。
暗く厚い雲に日差しが遮られ、夕日もなく夜を迎えるだろう。
雨はまだ落ちてこないが、時間の問題だと思う。
冷たい風が頬を撫で、髪を巻き上げる。
「乗れ」
その言葉に無言で従い、振り返ることもなく車は発進した。
走り出してしばらくしたとき、彼は静かに沈黙を破った。
「俺は………どんな結果でも後悔はない」
持てる知識、調べられる限りを尽くしたから。
「お前の協力をあてにしていいんだな?」
「…………」
「呼べたとしても、呼べなかったとしても。
その存在は必要不可欠だ、利用したと思ってくれても構わない」
「彼が現れたとしても、あなたの願いを叶えるとは限らないわ。
それでもいいなら、わたしは力になる」
会いたくない、という嘘はつかない。
求めているのは事実だから………。
ミラはカイトを見ることはなく告げた。