彼女に捧げる新世界
「書物には、契約、約定と記されていた」
……くだらない。
説明するのも面倒で、馬鹿馬鹿しい話だ。
他人が残したものの希望にすがった時点で底が知れるというのに。
「お前と俺が、対等だと思うならね?
わからないの?
格の違いを……」
ニルがクスリと笑うと、ふわりと風が起き、非常灯の灯が消えた。
代わりにかパリパリと雷の音が響き、彼の翼が雷気を帯びる。
これは………!!
危ないっ!
慌てたミラが彼の腕に飛び付き、収めようとした。
このままだったら……。
脅しじゃ済まないかもしれない。
腕を掴まれたニルが僅かに驚いた様子でミラを見下ろした。
「……なに?」
「ダメっ!」
「ミラ、」
お願い、やめて。
そう思いながら力をいれた瞬間、
「そのままその方を押さえていて下さい」
予想もしない声がした。