彼女に捧げる新世界




「書物には、契約、約定と記されていた」



……くだらない。

説明するのも面倒で、馬鹿馬鹿しい話だ。



他人が残したものの希望にすがった時点で底が知れるというのに。



「お前と俺が、対等だと思うならね?

わからないの?

格の違いを……」



ニルがクスリと笑うと、ふわりと風が起き、非常灯の灯が消えた。


代わりにかパリパリと雷の音が響き、彼の翼が雷気を帯びる。




これは………!!

危ないっ!



慌てたミラが彼の腕に飛び付き、収めようとした。



このままだったら……。



脅しじゃ済まないかもしれない。



腕を掴まれたニルが僅かに驚いた様子でミラを見下ろした。


「……なに?」

「ダメっ!」

「ミラ、」



お願い、やめて。



そう思いながら力をいれた瞬間、



「そのままその方を押さえていて下さい」



予想もしない声がした。





< 69 / 205 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop