彼女に捧げる新世界
涙を見た数日後に、俺は首都まで来ていた。
この日を選んだのは、首相の街頭演説が催される日だったから。
世間は今も殺人に不安を感じているようで、人通りが少ない気がする。
どうでもいいが、混雑を極めるよりマシだ。
逃げるつもりもないし、軍内部でも政治に不満を持つ者はたくさんいる。
そんな奴らとは上手く通じる事が出来た………。
作戦は成功するだろう、話術には自信がある。
事は面白いほど思うように運んできた。
後は仕上げをするだけだ。
監視を消し、科学者を消し、闇組織は傘下に入れ、軍も押さえた。
我ながらたいしたものだろう?
俺は静かに歩き出す。
首相が護衛を伴い車から降りる。
距離は、約500メートル。通常よりも良すぎる視力は鮮明に対象を映した。