終わりなき想いの果てに
わたしは慌てて床にはいつくばり、鏡の欠片を集めた。

―― 悲しい。寂しい。悲しい…

胸を締め付ける喪失感。

尋常でない心の痛みが、わたしを襲う。


たかが鏡。
旅行先で手に入れた、さほど高価でもない鏡だ。

手に触れたのは、まだこれで2度目。
特に思い入れが深いわけでもないというのに、この痛みはなんなのか?

まるで、

―― 大切な人を失った時のような…


堪えきれず、涙が零れた。











「わたしを解放したのはおまえか?」


突然、頭上から声が降りてきた。

その声は、掠れることなく低く、なんとも魅力的な声だったのだが、有り得ない突然の第三者の出現に、わたしは驚いて顔を上げた。


「‥っ!?」

声を失う程の驚愕は、これが初めてだったと思う。


わたしの目前には、

悪魔がいた。


いや、正直何者なのかは分からない。

ただ、大きな黒い翼と尖った耳、そして禍々しい2本の角が、わたしに悪魔を連想させた。



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