P.S.私は幸せです
「あなたの名前はー…」


サークルの会議でもそんなに発言せず、年齢も違うとなれば名前がわからないことが多い。


それにも増してサークルの人数は一年から四年まで合計で軽く三桁はいく。


「俺は、高松優真(タカマツ ユウマ)。せっかく今隣になったんだし美菜子ちゃんのこと知りたいな」


それから、私と高松さんはお互いのことを色々話した。


たわいもないことや授業に関しても。


酒もまわり、楽しい時間があっという間に過ぎていった。


思い返してみると、そんな大人数で学年の違う私の苗字を知っているのは謎だ。


私も彼と同じで発言はせず成り行きを見ている派である。


彼独特の人を包み込み安心させてしまう話し方や表情。


この罠にすでにかかっていた。


"捕まった獲物は逃がさない"


その言葉がぴったり似合う彼に。


「美菜子ちゃん、俺と付き合ってみない?」


別れ際に言い出した最終段階の罠。


本気なのか、酒の魔法か。


それでも私は考えることもなく首を縦に振り、しっかり捕まってしまったのだった。


そのときの勝ち誇ったような彼の顔は今でも忘れられない。
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