黄昏色に、さようなら。

ここに至って、ようやく声帯が働き始めて第一声、


私の口から飛び出したのは純ちゃんがなぜ家のお風呂を使っているかではなく、


明るいブラウンから明るすぎるオレンジに変色した、その頭髪についての疑問だった。


だって、これじゃまるで『夢の中の純ちゃん』みたいだ。


あれは夢だから許容できる色合いであって、リアルにこの色の髪の毛はありえない。


「似合わないか? けっこう気に入ってるんだけど」


すぐ目の前で、『うん?』と、形の良い瞳が悪戯っぽく細められる。


「に、似合うとか似合わないじゃなくって……」


ち、近いよ顔っ!


あまりの至近距離で視線がつかまり、思わずしどろもどろになっていると、私たちの気配を察したのか、ダイニングの方からおばあちゃんの、のんびりとした声が飛んできた。


「風(ふう)ちゃん起きたの? 今、お風呂は純一郎君が使っているからねー」


って、もう知ってるよ、おばあちゃん……。

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