黄昏色に、さようなら。
暮れなずむ、見慣れた街の向こう側へ、
沈み行く深紅に燃える夕日を、今まさに飲み込もうとする、夜の闇。
その闇にまぎれるように、
急に下がりだした夜気に身を震わせる暇もなく、家路に急ぐ人波を縫って、私はひたすら走っていた。
正確に言えば、何者かから『逃げていた』。
一つ、
また一つ、
燈っていく街の灯りが、視界の先で激しく舞い踊る。
――苦しい。
足が、腕が、肺が、そして、心臓が。
もうこれ以上の負荷には耐えられないと、もう限界だと悲鳴を上げている。
でも、
止まるわけにはいかない。