黄昏色に、さようなら。

「もう少しだから頑張れ!」


ギュッと握る手に力を込められても、再びふるふると頭を振った。


だって、


このまま行けば、そこにあるのは『別れ』。


なら、それなら、


最後までこのまま一緒にいたい――。


「っ……」


言葉にできない想いが涙の雫となって瞳から溢れ出し、止めどなく頬を伝い落ちる。


立ちすくみ、ただ声を殺してしゃくり上げる私を、彼は優しく引き寄せると、


まるで壊れ物を扱うみたいにすっぽりと包みこんで、私の頭にそっと顎を乗せた。


冷えた体に、じんわりと染み渡る彼の体温。


そのぬくもりに身を預けながら、やはり私はなす術もなく泣くことしかできない。


「風花(ふうか)……」


少し困ったように、


そして諭すように、彼は私の名を呼ぶ。

< 6 / 100 >

この作品をシェア

pagetop