黄昏色に、さようなら。
「ナァニ? 加瀬くん、アタシに知らせないでバックれるつもりだったんだ?
へぇ、さすがに特Aランク様は、やる事がエゲツなくていらっしゃる」
私の頬から自分の頬を引きはがし、でも首に回した手は離さないまま、良子ちゃんは、ギロリと鋭い眼差しと棘だらけの言葉を純ちゃんに投げつける。
あれれ?
もしかして、純ちゃんと良子ちゃんって、犬猿の仲なの?
にらみ合う二人をポカンと見ていたら、そんな私の気持ちを読んだみたいに、
「違うわよ、恋敵だったの!
こいつは、アタシの大事な親友を毒牙にかけた憎っくき野郎なのよっ」
と、良子ちゃんは、私に大きすぎる声で耳打ちをする。
それって、恋敵?
というか、良子ちゃんも心が読める人?
「誰が毒牙にかけた、誰がっ!」
「そこの人参頭に決まってるじゃない!」
「あんただって、似たような頭じゃないか!」
「あら、失礼ね。アタシのは麗しい栗色の御髪(おぐし)と言うのよ。馬にかじられる人参頭と一緒にしないでよ!」
「俺は馬にかじられた事はないっ!」
え、え~と。
「二人とも、それくらいにしておきなさい。風花ちゃんが、困っているじゃないか」
のんびりとした声音にも関わらず、さすがの博士効果。
鶴の一声で、二人のバトルは終わりを告げた。