黄昏色に、さようなら。
うつら、うつらと、
夢と現実の狭間を、どのくらいたゆたっていただろうか。
「風花――風花ってばっ」
私は、自分を呼ぶ聞き覚えのある声に反応して、パチリと目を開けた。
たっぷりと良質の睡眠を取った後の、さわやかな朝の目覚めのような、そんなスッキリとした覚醒。
白い天上と、白い壁。アイボリーのカーテン。
研究所の病室?
ううん違う。ここは、高校の――。
「保……健室?」
やけに鮮明な、鮮明すぎるビジョン。
今のは、ただの夢?
それとも……?
あまりにリアルな夢の余韻がさめやらず、
もしかしたら、今こうして見ているのも夢なんじゃないかという不安がよぎり、思わずギクリと体を強張らせると、
「脅かさないでよ、まったくー!」と、眉根を寄せた良子ちゃんの顔が、ヌッと視界に入ってきた。
濃紺のブレザーと、グレーのプリーツスカート。
エンジのネクタイ。
見慣れた、高校の制服姿だ。
栗色じゃなく、黒いセミロングの癖っ毛が、フワリと揺れている。
「良……子ちゃん?」
が、居るってことは、きっとこれは現実。
そんな脈絡のない安心感が、強張っていた体の力をスウっと抜いてくれる。
ジャーナリスト志望の、完全無欠のリアリスト。
我が親友の見事なまでの存在感に、思わず感謝。